Column

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インド舞踊ことはじめ

インド舞踊は約5,000年前に遡る歴史を持ち、世界のあらゆる舞踊の源流ともされています。それは単なる身体表現にとどまらず、深く信仰に根差したものとして発展してきました。
舞踊は神々を讃える賛歌であり、普遍的な天体の運行や、繰り返される生と死を、悠久の律動に乗せて表現します。各地に伝わる神話をベースに、神々への信仰や愛、情動が織り込まれ、精神と物質、理性と官能が絡み合うように共存しています。優れた踊り手が舞う時、神々もそれに応えて舞い始めるといいます。こうして人と神が交感する場が、インド舞踊なのです。
各地には様々な舞踊が伝わっていますが、なかでもインド8大古典舞踊とされているのは、バラタナティヤム、カタック、カタカリ、マニプリ、オディッシー、モヒニヤッタム、クチプディ、サットリヤ。インド最古の聖典『リグ・ヴェーダ』や二大叙事詩『マハーバーラタ』、『ラーマーヤナ』などを題材とし、踊り手の生身の肉体によって神話を顕現するのが、古典舞踊の共通したテーマです。かつて古典舞踊はそれぞれ寺院に属しており、寺院には必ず踊り場がありました。神様に捧げる踊りであるため、それぞれの舞踊発祥地で最上の工芸品を、踊り手の衣装や装飾品に取り入れているのも特徴です。

Bharatanatyam バラタナティヤム

タミル・ナードゥ州(南インド)。インド古典舞踊の中でも最古級とされ、ダイナミックで激しい足の動きと手の細やかな動きの調和がとれた直線的な動きが特徴の女性舞踊手のソロ・ダンスです。衣装は同州カンチープラム産の金糸入りシルクサリーで、月と太陽のオーナメントを頭部に飾り、アクセサリーはすべて金製品です。

バラタナティヤム @wikimedia commons

Kathak カタック

デリーを中心とした北インド。歴史は紀元前とされますが16世紀にイスラムの庇護を受けて宮廷舞踊となったため、衣装にもヒンドゥー衣装とムガル衣装があり、演目によって使い分けられています。上半身の動きはほとんどありませんが、大量の鈴(グングル)をつけた足の動きは最も激しいといわれます。

カタック @wikimedia commons

Kathakali カタカリ

ケララ州(南インド)。仮面のような隈取り化粧の男性が演ずる演劇性の強いもので、数百もの手指の身ぶりと表情によって物語が展開していきます。豪華な冠と膨らんだスカートのような衣装が特徴的です。

カタカリ @wikimedia commons

Manipuri マニプリ

マニプル州(北東インド)。優美で流れるような動きと軽快なステップが特徴的で、ほかの舞踊のような鈴は付けません。衣装は宝石やミラーをちりばめた円筒形のスカートの上にオーガンジーのフレアースカートを重ねています。頭にはヴェールのような布をまといます。

マニプリ @wikimedia commons

Odissi オディッシー

オディシャ州(東インド)。主に女性1人で踊られるもので曲線的な動きを持ち、高度に美的で叙情的。そのほとんどがクリシュナ神の物語を題材としています。衣装はオディシャ産の絣織りサリーで、寺院をかたどった花飾りを頭部につけ、アクセサリーは同州カタック産の銀細工を用います。

Mohiniyattam モヒニヤッタム

ケララ州(南インド)。ケララの豊かな自然が動きのモチーフとなっており、足さばきは複雑でなく、ゆったりした円の動きが特徴的な踊りですが、特に顔の表情をもっとも重視して演劇的な要素を持っています。金色の縁取りがある白色のサリーを身に纏い、頭の左部分に髪を束ねて踊ります。

モヒニヤッタム @wikimedia commons

Kuchipudi クチプディ

アーンドラ・プラデーシュ州(南東インド)のクチプディ村。この村の村祭りで踊られていた男性のみによる宗教的舞踊劇から発展しました。バラタナティヤムに似ていますが、よりロマンティックで躍動感があり、とくに真鍮のお皿の上で踊る演目は独特です。衣裳は足首まで長く巻かれたサリーを前でプリーツにたたんで着付け、金色のアクセサリーを飾ります。

クチプディ @wikimedia commons

Sattriya サットリヤ

アッサム州(北東インド)、ブラマプートラ川に中央にあるマジュリ島。16世紀に迫害を逃れた聖人が同地に開いた「サットラ」とよばれる僧院に由来する踊りで、そのためサットリヤの基礎には僧がターラ(シンバル)を持つ姿や祈りの所作が多く見られます。衣装にはアッサム産のムガ蚕からとれる、黄金色に輝く最高級絹糸・ムガシルクが使われます。

サットリヤ @wikimedia commons